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『遊星からの物体X』リメイク決定


80年代SFホラーの永遠のマスターピース『遊星からの物体X』 のリメイクが決定したらしい。 慢性的なネタ不足に悩むハリウッドは最近この時代のホラーの リメイクが盛んだけど、どれも最近の業界コードに縛られて 大体やくたいもないアクションもどきに終わることが多い。 この映画の魅力は、雪に閉ざされた極地基地のむさくるしい 閉塞感(むくつけき男しかいないからね)、誰が怪物なのか わからないサスペンス、そしてロブ・ボティンのグチョグチョ 特殊メイクだ。人間や犬が崩壊溶解し異形のものになっていく 映像的ショックは今も生々しい。有名な、ちぎれた男の首から クモみたいな脚とカニみたいな目が生えてチョコチョコ歩き だすシーンはグロテスクが極まって痙攣的笑いすら生む。 で、これを今リメイクするとなれば、当然こうしたメタモル フォーゼのシーンはオールCGになるだろう。 だが、それではダメなのだ。 確かに当時の特撮は合成ゴム製のハリボテだ。 しかしフィルムには「それ」の確かな存在感と重量感があった。 手を伸ばせば触れることのできる実体がスタジオにあった からだ。飛び散る血や体液はCGではなく、確かに現場を 濡らしていたからだ。だからこそ生まれる緊迫感があった。 CGの進歩は確かに凄い。 が、依然としてわしにはそれは「よくできたアニメ」にしか 見えない。どんな恐ろしい怪物も、無菌の仮想空間にしか 存在しないデータにすぎない。質量のあるモノは(それが 才能ある職人によって精緻に作られたモノなら特に)、 そこにあるだけでゴーストを持つ。付喪神と言ってもいい。 もう少し具体的な話を付け加えれば、質量のあるモノは 地球の物理法則に従ってしか動けない、という制限がある。 それを想像力の制限ととる向きもあるだろうが、その不自由さ 重苦しさが、ある名状しがたいリアリティにつながっている、 とわしは思う。 最近のハリウッド映画を見ていていちいち気に食わないのは CGクリーチャーが非実在の利点を必要以上に発揮して、 物理法則をいとも軽々と超越した動きをすることだ。 クリーチャーを画面上で活き活きと見せるために加えられる 動きのデフォルメやリズムは、どうしてもアメリカ人固有の アニメ的波長になる。それが悪いとは言わないが、存在感の 点では、それはもはやバッグス・バニーと同列なのである (誤解のなきように言っておくがルーニー・チューンズは 大好きだ)。 『ゾンビ』や『悪魔のはらわた』級のクソリメイクになる ことはおそらく間違いないのだろうけれど、ただひとつの 救いは『宇宙空母ギャラクティカ』のリメイクを大傑作に 仕上げたロナルド・D・ムーアが脚本を手がけてくれることかな…

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